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「利き手がケガしてると、ノート写すのも大変だね。紗良のノート、ミミズがいっぱい」
一日の授業が全部終わったあと、小春が机の上に出しっぱなしていたノートをパラパラめくって、ユーコと同じようなことを言ってきた。
「治るまで二週間くらいかかるんだよね? 授業も大変そうだけど、家庭科部はどうするの? 料理も不便だよね」
「うん。参加はするけど、しばらくは食べる専門かな」
「いいね、それ。わたしも食べる専門になれるなら家庭科部とかけ持ちしよっかな」
「たくさん作れたら、また持っていくよ」
バドミントン部に入っている小春は、わたしが家庭科部で大量生産したお菓子を差し入れると喜んでくれる。
「ありがとう。わたしはもう部活行くね。また明日」
「うん、明日」
教室を出て行く小春に手を振ると、わたしの横でユーコも小春に手を振っていた。
わたしにしか見えてないし存在すら知られてないのに、ユーコはわたしと小春の会話を聞いて相槌を打ったり、ツッコミを入れてくることもある。
そういうときのユーコは、ユーレイじゃなくて普通の女子中学生みたい。そもそも、ユーコは見た目が全然ユーレイっぽくないからね。
「わたしも部活行くね」
小声で話しかけると、「楽しんできてね」と笑ったユーコが、わたしの向こうを見ながらまばたきをした。
「ねえ、紗良ちゃん。後ろ……」
ん、後ろ?
振り向いたわたしは、驚いて固まってしまった。
すぐ近くに高橋くんが立っていたのだ。



