わたしの秘密のキューピット


「な、な……」

 なんか、高橋くんとバッチリと目が合っちゃった。

 慌て過ぎて、思わず机の脚を蹴ってしまう。

 授業中なのにガタンと大きな音が響いて、また焦る。

 両手で顔を隠すと、わたしは心を落ち着かせるために深呼吸した。

 どうして高橋くんは、こっちを見てたんだろう。わたしが自意識過剰なだけ――?

 頬を火照らせながらうつむいていると、顔のそばにユーコの気配を感じる。

「高橋くん、今日は結構紗良ちゃんのことをよく見てるよ」

 ユーコが耳元でそんなことを言うから、火照った頬が茹ったみたいに熱くなった。

「そんなはずないでしょ」

 口をパクパクさせながら小声で言うと、ユーコがニヤッとする。

「そんなはずあるんだって。気になってるんじゃないかな、紗良ちゃんのこと」
「え?」
「ぶつかってケガさせたこと、気にしてくれてるのかもよ?」

 あぁ、なるほど。そういう意味で気にしてくれてるのか……。

 でも、ケガしたのは、わたしがうっかり箒を持ち上げたせいだし。

 高橋くんが気にすることじゃないのにな。

 むしろ、そんなこと気にかけてくれているなら申し訳ない。

 胸に手をあててから、フーッと少し深呼吸。

 あらためて右隣を向くと、高橋くんはもうこっちを見てはいなかった。