「あたしがあざといなら、さっきの紗良ちゃんは挙動不審だよ。高橋くんもびっくりしてた。変な子だって思われちゃったかもねー」
ユーコがちょっと意地悪な口調でそう言ってくる。
「変な子……」
急なできごとに対応しきれずに逃げだしてきちゃったけど……。
高橋くんにおかしな子だって思われるのは嫌だな。
地味にショックを受けていると、ユーコが笑いながらわたしの肩にトンッと手をのせた。
重みは全く感じないけど、肩のあたりの空気がひんやり冷たい。
「次のチャンスは逃しちゃダメだからね。とりあえず、保健室行こう。高橋くんの代わりにあたしがついていってあげる」
「ついてきたって、ユーコは見えないから意味なくない?」
「気持ちの問題だよ。そのケガ、重症だったらどうするの?」
「大丈夫だって」
軽く右の手首に触れながらヘラヘラと笑い返すと、ユーコが顔をしかめた。
「ちょっとくらいってケガを甘く見るのは絶対ダメ。捻ったとき、ほんとうはすごく痛かったでしょ」
ユーコがそう言って、わたしの右手首に手をあてる。その瞬間、高橋くんに助けられたことでテンションが上がって忘れていた痛みが戻ってきた。
「ユーコ、今何かした? 急にすごく痛くなってきたんだけど……」
ズキンズキンと骨に響くみたいな痛みに顔をしかめると、ユーコが呆れ顔でわたしを見下ろす。
「なにもしてないよ。高橋くんと話してテンションがおかしくなってただけで、それがほんとうの紗良ちゃんのケガの痛み。ほら、早く保健室行こう」
わたしの後ろに回ったユーコが、背中を押す。
ふわっと冷たい空気に押されるような感じがして、わたしの足が前に一歩二歩と進み出た。



