廊下を走っていると、わたしを追いかけてきたユーコがスーッと横に並んだ。
「どうして逃げてるの。保健室まで付き添ってもらえばいいのに。話せるチャンスじゃん」
わたしが走るのと同じ速さで宙を飛びながら、ユーコが不満そうに唇を尖らせる。
ユーコはわたしのケガの心配ではなく、高橋くんと話すチャンスを逃したことのほうを残念に思っているらしい。薄情なユーレイだ。
「だって……。さっき助けてもらったとき、左腕が高橋くんと触っちゃったんだよ? ついでに、ものすごく心配そうな顔で見つめてもらえたんだよ? それだけでも心臓爆発しそうだったのに、保健室まで一緒についてきてもらうなんて無理だよ。保健室にたどり着くまでに、心臓が壊れて死んじゃう」
「紗良ちゃん、それくらいでは死なないよ」
「あ、ごめん……」
必死に訴えるわたしを、ユーコが呆れ顔でじっと見下ろしてくる。
ユーコの前でうかつに「死ぬ」なんて、冗談でも言ったらダメだった。
視線をそらすと、ユーコがため息を吐く。
「まあ、別にいいけど。それより、紗良ちゃんにひとつアドバイス。さっきみたいに保健室についていくって言ってもらえたときは、素直に連れてってもらったほうが絶対かわいい」
「かわいい?」
「うん、絶対そのほうが好印象。そんなに痛くなくても痛いフリして、高橋くんに甘えちゃえばよかったんだよ」
「ユーコって、結構あざといよね」
ユーコは見た目が可愛いし。生きてるときだって、きっとクラスの中心グループにいたんだろうな。



