わたしの秘密のキューピット


「紗良ちゃん、危ない!」

 ユーコの叫び声に横を向くと、すぐそばに男子生徒の気配があって。状況を理解できないままに、彼に押されて転ぶ。

 咄嗟に床についた右手がグキッと変なふうに捩れ、瞬間的に電気が流れたような強い痛みを感じる。

 この痛さはヤバい……。

 脂汗が出そうな痛みに奥歯を噛み締めたとき、「ごめん!」と焦った声が聞こえて、わたしにぶつかるように倒れてきた男子が慌てて起き上がった。

「わたしもごめんなさい……」

 きっと、わたしが持ってた箒で足を引っ掛けたんだよね……

 右手首の痛みを堪えながら顔をあげる。その瞬間、呼吸が止まりそうになった。

 わたしが箒をひっかけた相手が、高橋くんだったからだ。

 ど、どうしよう……。

「ご、ごめん! ケガ……、ケガとかしてない!?」

 万が一、足をケガさせてたらどうしよう。高橋くん、サッカー部なのに。

「いや、おれは平気。武部さんは?」

 あたふたとするわたしに、高橋くんが手を差し伸べてくる。そのまま右手首を軽くつかまれて、涙と叫び声が出そうなくらいの痛みが走った。