正直、高橋くんと気軽に話せる前田さんたちのことがうらやましくないわけではない。
だけどわたしみたいなタイプの子は、そう簡単に高橋くんに近付けない。
「紗良ちゃんのほうから話しかけるのが難しいなら、高橋くんから話しかけなきゃならなくなる方法考えてみる? 授業中に消しゴム落とすとか……。あ、今度は紗良ちゃんが教科書忘れてみるっていうのはどう?」
わたしの気も知らないで、ユーコがペラペラと話してる。
それを無視して、掃除用具入れに近い教室の後ろ側のドアのほうに歩いて行くと、後ろから廊下を走ってきた他クラスの男子に追い抜かれた。
「楓真ー! ちょっといい?」
「なに?」
呼ばれた高橋くんが、教室から出てくる。
そのとき、友達のところに駆け寄ってきた高橋くんが、わたしのほうをちらっと見てくれたような気がした。
勘違いだってわかってても、胸がドキドキする。
「今、ちょっと紗良ちゃんのほう見てくれたね」
顔を赤くしたわたしをユーコがからかってくるから、はずかしかった。
「やめて。変にからかわないでよ……」
小声でそう言うと、ユーコを威嚇するように軽く箒を持ち上げる。その瞬間、箒の柄を握る手が急に少し重たくなった。



