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次にユーコがわたしの前に姿を現したのは、授業後の掃除の時間だった。
「もうわたしの前には出てこないかと思った」
「どうして? 紗良ちゃんの恋の行方を見届けるまでは消えないよ」
ユーコがきょとんとした顔で首を傾げる。
意見の食い違いでケンカになったと思ってたけど、気にしていたのはわたしだけらしい。
戻ってこなかったらそれはそれで仕方ない。そう思ってたのに、ユーコの姿が見えたことに、なぜか少しほっとした。
「今までどこにいたの?」
いつもは授業中でも休み時間でもわたしのそばをうろうろして、高橋くんと話せるチャンスを狙って目を光らせているユーコ。そんなユーコが、わたしと離れているあいだに何をしていたのかが気になる。
「ずっと紗良ちゃんのこと見てたよ。気付かれないように、少し離れたところから」
「見てたの?」
「うん。一度客観視してみようと思って。紗良ちゃんだけじゃなくて、離れたところから高橋くんのことも見てたの」
「高橋くんも?」
ユーコの言っている客観視が、何のことだかさっぱりわからない。
「紗良ちゃんはやっぱり、もっと頑張って高橋くんに話しかけるべきだと思う」
胸の前で気合いを入れるようにぐっと右手を握りしめたユーコが、そんなふうに言ってくるからますますわけがわからない。



