クラスメートの男子達に囲まれている高橋くんのことをこっそり見ていると、高橋くんがわたしのほうを振り向いた。
ヤバい。視線に気付かれたかも……。
「やっぱ挨拶なんてムリだよ、ムリっ!」
高橋くんからパッと顔をそらすと、ユーコが呆れ顔でわたしを見下ろしてきた。
「ムリとか言ってたら、永遠に高橋くんと両想いになれないよ?」
「両思いなんて、そんなの初めからなれるはずないよ」
腰に手をあてたユーコは、わたしに小言を言うときのお母さんみたいだ。
「何もせずに諦めちゃダメだってば。教科書貸してあげたときだって、いい感じだったじゃん」
「どこが?」
ユーコの言葉に、わたしはむっと膨れっ面になった。
教科書を見せてあげてるときのわたしは、緊張しすぎて授業中ずっとカチンコチンだった。
あれのどこをどう見たら、いい感じだったんだろう。
「もう行くから。わたしも部活あるし」
低い声でつぶやいて、ユーコに背を向ける。そのとき、友達と一緒に席を離れようとしていた高橋くんと目が合った。
ドキンとして、慌ててうつむく。そんなわたしの耳に、高橋くんの笑い声が聞こえた。
「武部さん、なんかさっき、ひとりで百面相してなかった?」
「へ?」
顔をあげてパチパチとまばたきすると、高橋くんが八重歯を覗かせて、ふはっと笑う。



