その日の放課後。カバンに荷物を詰め込んでいると、部活に行く準備をしていた高橋くんのもとに、クラスメートの男子たちがわちゃわちゃと集まってきた。
「楓真ー、部活行こ」
「おぅ」
スクールバッグを肩に下げた高橋くんの横顔を見ていると、わたしの隣でおとなしくホームルームに出ていたユーコが、ちょんちょんと肩を突っついてきた。
ユーコはほかのクラスメート達には見えないし、わたしから触ることはできない。
だけど、ユーコのほうは空気を動かす感覚でわたしに触ることができるらしい。
そっと振り向くと、ユーコが高橋くんのほうを指さしながらにこっと笑って首を傾げた。
「紗良ちゃん。高橋くんにバイバイ言わないの?」
あたりまえみたいにそう尋ねられて、ぼぅーっと全身が熱くなる。
「そ、そんなの言えるわけないじゃん」
「でも、高橋くんに紗良ちゃんのことを意識してもらうためには、ちょっとしたことでも積極的に話しかけないと」
「そんなの、ムリだよ。それに、急にわたしが挨拶とかしたら不自然じゃん」
「そんなことないって。おはようとバイバイから初めて、ちょっとずつ会話を増やしていくんだよ、紗良ちゃん」
「そんなこと言われても……」
高橋くんのことは、見てるだけで精一杯。
それに……友達と楽しそうにしてるところに、わたしなんかが突然声をかけたら迷惑じゃん。絶対変に思われる。



