【完】きみは硝子のゼラニウム





私の心臓、一体どうしたんだろう。最近ほんとにおかしい。


尋くんの何気ない一言とか、ふいに触れる指先とか、優しく笑う目とか、そういうひとつひとつに過剰反応して、勝手にドキドキして。


こんなの初めてで、どうしたらいいのか分からない。



「…スリッパ脱いで歩くもん」



むっとしてそう言い返すと、尋くんは一瞬きょとんとしてから、はははっ、と声を上げて笑った。


その笑い方が悔しくて、私は意地みたいに足を止めて、ぱたん、とスリッパを脱いでみせる。

ぺたっと冷たい地面に素足が触れる。


ほら、これで文句ないでしょ、なんて言いたげに顔を上げて、ちょこんと尋くんの隣に並ぶ。


すると、スリッパの厚みがなくなった分だけ、隣にいる尋くんがやけに大きく見えた。


少し遠くなった尋くんの顔を見上げると、目が合った瞬間、ふわっと優しく細められて、かわいーな、なんて。平気な声でつぶやくから、心臓がまたおかしくなる。



………何でもないみたいな顔でそんなこと言わないで。