【完】きみは硝子のゼラニウム





「胡蝶蘭の花言葉ってなんでしたっけ?」



きらきらした期待のこもった声で聞かれて、私は一瞬だけ記憶をたどる。



「胡蝶蘭は…いろいろあるんですけど、“幸せが飛んでくる”とか、ですかね」



そう答えると、彼女は、へ~!と嬉しそうに目を丸くした。

花束の中でやわらかく咲く胡蝶蘭を、まるで宝物みたいに見つめながら、小さく何度も頷いている。

その姿を見ていると、胸の奥がじんわり温かくなった。


どうか、このお店にも幸せが飛んできますように。


私は花を作ったわけじゃないし、届けることしかできないけれど、それでも贈るたびに、心の中でそっと願ってしまう。



「素敵なお花、ありがとうございました」



最後にそう言って、満開みたいな笑顔を向けてくれた彼女に、私も自然と笑顔を返す。


自動ドアを抜けて外に出ると、すぐそこに尋くんがいた。

壁にもたれながら、ちゃんと約束通り待っている。


ほんとに、待ってたんだ。