【完】きみは硝子のゼラニウム





お願い、と小さく息を吸ってから、顔の前で両手を合わせる。
拝むみたいな格好のまま、そっと尋くんを見上げた。



「その顔ずるいって」


「…その顔?」



きょとんと聞き返すと、尋くんは一瞬言葉に詰まったあと、視線を逸らして、



「あー…なんもない。待ってるから、行っておいで」



と、ぶっきらぼうに言う。


な、なに?


首を傾げたまま見つめていると、なぜか、はあ、と大きめのため息をつかれて、しっしっと追い払うみたいに手を振られた。


そっちが勝手についてきたくせに、なんなの。


そう思いながらも、今は仕事中、今は仕事中、と頭の中で繰り返して、私はひとりでお店の中に入った。


よく見るチェーン店で、ガラス張りの店内にはふわっと甘い香りが漂っていて、かわいいベビー用品や美容グッズ、淡い色のポーチやアクセサリーがきらきらと並んでいる。