【完】きみは硝子のゼラニウム





歩き出す背中を見て、置いていかれないように慌てて並ぶ。

距離が近い。さっきより少しだけ、空気がやわらかい気がするのは、名前を呼んだから?

そんなわけないのに、意識してしまう。



「……なんで付いてくるんですか」



小さく、でも一応聞いてみる。

すると尋くんは、少しだけ首を傾げて。



「一緒にいたいから」



春の風がまた吹いて、花束のリボンが揺れる。

その隣で、私の心もぐらぐら揺れている。


配達先まで、まだ少し距離がある。


こんな調子で、ちゃんと仕事できるのかな。隣を歩く人の存在が、あまりにも大きすぎて。


花よりもなによりも、今はもう、尋くんの一言一言に振り回されている自分がいる。



エプロンのポケットからスマホを取り出して、マップアプリを開く。

先に花束を予約してくれたお店は、この角を曲がって少し歩いた先。


画面を閉じて顔を上げた瞬間、隣を歩く尋くんの横顔が視界に入って、胸がぎゅっと鳴った。

ほんとに、ついてくるつもりなんだ。


どき、どき、どき。


まただ。この音には全然慣れない。