【完】きみは硝子のゼラニウム





すると、頭上から、めっちゃいい、と少し弾んだ声。


もう、だめだ。いやだ、この人。私に名前を呼ばれて、なにがいいのか。


なのに、そっと視線を上げると——尋くんは、本当に嬉しそうな顔をしていて。


目尻が柔らかく下がって、口元も隠しきれないくらい緩んでいて、なんだか周りに花が咲いてるみたいに見える。



「はい、返すよ」



するり、と鞄が差し出される。



「あ…はい」



慌てて受け取ると、さっきまで彼が持っていたせいか、ほんの少しだけ温もりが残っている気がして、余計に落ち着かない。



「じゃー、行こ」


「えっ!?」


「えって、なに。返しただけで、付いてくって」



いやだから、なんで…?