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「ひなちゃーん!ゼラニウム入荷したから、頼んでもいーい?」
「はーい!」
気づけば、もうすぐ春がやってきていて、店内は色とりどりのお花で溢れている。
光を受けて花びらがきらきら輝き、香りがふんわり漂う中、カウンターに置かれた赤いゼラニウムを見つけて、よし!と腕まくりをする。
ハサミを手に取り、花を切ろうとした瞬間——
カランカラン、と扉が開く音が鳴った。
反射的に視線を向けると、そこに立っていたのは——
「尋くん…!」
「あ、ちゃんと仕事してる?」
「してますよっ!」
ぷくっと頬を膨らますと、軽く笑われる。
一度やめたPetal & Co.
もう戻れないと思っていたし、足を踏み入れることもないだろうと考えていた。
でも、尋くんに背中を押されて、私はバイトに応募した。
店長が泣きながら「おかえり」と言って抱きしめてくれた日のことも思い出す。涙が止まらなかったあの日の感覚が、胸の奥でそっと蘇る。
「これ、なんて花?」
尋くんがカウンターまで歩み寄り、じっと赤いゼラニウムを見つめる。
「これは、ゼラニウムです」
そう答えると、尋くんは「へえ」と呟いて、赤いゼラニウムを一本手に取って、くるくると回す。



