【完】きみは硝子のゼラニウム





今日は雪が降っていなくて、空もどこか明るくて、最近の中では少しだけ過ごしやすい朝だった。

それでも外に出ると、吐いた息は白くて、冬なんだなって改めて実感する。


尋くんと「朝ごはんどうする?」なんて他愛もない会話をしながら、近くのコンビニで済ませようってことになって、ふたりで並んで歩くこの時間が、なんだかくすぐったくて、でもすごく幸せで——さっきまでの緊張が、少しだけやわらいでいく。



隣を歩く距離は近いのに、触れそうで触れない手がもどかしい。あとほんの少しで届くのに、そのほんの少しが遠くて、意識すればするほどぎこちなくなってしまう。


どうしていいか分からなくて、誤魔化すみたいに斜め上を見上げると、そこには寒さで頬を少し赤くした尋くんの横顔があって、その無防備な表情にまた心臓が跳ねる。


ずるいなあ……こんなの、意識しない方が無理だよ。



コンビニに着いて、それぞれ朝ごはんを選ぶ時間さえも、なんだか特別に感じる。

私はサンドウィッチを手に取って、これにしようかな、なんてぼんやり考えながら、ちらっと視線を向けると、尋くんはパンのコーナーで商品を見ていた。