【完】きみは硝子のゼラニウム





こうして寝顔を見ているだけで、こんなに楽しいなんて思わなかった。時間がゆっくり流れているみたいで、少しだけ現実じゃないみたいな感覚になる。



そういえば、この前泊まったときも寝起きよくなかった気がするな……なんて、どうでもいいことまで思い出して、ひとりで小さく笑いそうになる。



ぼんやりそんなことを考えていたとき、ふと、尋くんの少し伸びた前髪が目にかかっているのが気になった。


ほんの少しだけ眉間に皺が寄っていて、なんだか苦しそうにも見えてしまって——思わず、そっと手を伸ばす。


その前髪に触れた、次の瞬間。


パシッ、と音がするくらいの速さで手首をつかまれて、びくっと体が揺れた。

驚いて顔を上げると、いつの間にか目を開けていた尋くんと、ばっちり視線がぶつかる。



「あ……え、っと……おはようございます」



とっさに出た言葉は、なんだか変にかしこまってしまって、心臓は一気に跳ね上がって、頭の中が真っ白になる。



「……。」



わ、わわ……どうしようっ……!