【完】きみは硝子のゼラニウム





胸の中の小さな不安がひとつ消えて、代わりにまた別のことが浮かぶ。


尋くん、今日は何時までいてくれるんだろう……。


この時間が、あとどれくらい続くのか分からないことが、急に寂しく感じられてしまう。



そっと近づいて、尋くんが寝ているソファの前に静かに腰を下ろす。

起こさないように気をつけながら、その顔をのぞき込むと——思わず息をのむくらい、穏やかな寝顔がそこにあった。


寝顔、かわいい……。


規則正しく小さな寝息を立てていて、まるで子どもみたいに無防備で、そのギャップに胸がきゅーんと締めつけられる。こんなに近くで見ていいのかなって思うくらいなのに、目が離せない。


好きだな……。



「……好き」



ぽつりと、思わずこぼれた小さな声。

けれど、もちろん返事なんてなくて、尋くんは変わらず静かな寝息を立てたまま眠っている。


……やっぱり、聞こえてないよね。少しだけほっとしたような、でもどこか寂しいような、複雑な気持ちになる。


もし——私がちゃんと言葉にして「好き」って伝えたら、尋くんはどんな顔をするんだろう。


驚くのかな、それとも……うれしいって、笑ってくれるのかな。そんな想像をするだけで、胸の奥がぎゅっと苦しくなる。