【完】きみは硝子のゼラニウム





な、なんでそこだけこんなにはっきり覚えてるの私…!

恥ずかしさで頭を抱えたくなるのを必死にこらえながら、なんとかリビングの前までたどり着く。

ドアの前に立つと、さっきまでとは比べものにならないくらい心臓の音が大きくなっていくのが分かる。手のひらにじわりと汗がにじんで、ドアノブに触れた指先が少し震えた。



き、昨日私……尋くんと……。


頭の中でその事実を思い返した瞬間、思考が一気にパニックになる。



キ、キ、キキキスしたんだよね…!?


自分で思い出しておきながら、信じられないみたいに何度も心の中で繰り返してしまう。


ど、どんな顔で会えばいいの…!?普通に「おはよう」って言える?いや無理でしょ、絶対無理…!でも何も言わないのも変だし、かといってあのことに触れるなんてもっと無理で…。


どうしようどうしよう、と頭の中でぐるぐる考えが回り続けて、結局答えなんて出ないまま、私はただドアノブを握ったまま立ち尽くしていた。



お付き合いをしているわけではないけれど、それでも——本当に、うれしかった。