【完】きみは硝子のゼラニウム





……クマ、できてたらどうしよう。


ふと現実的な不安が浮かんできて、枕元に置いてあったスマホに手を伸ばす。

昨夜、充電しておいたはずのそれをつかんで画面をつけると、表示された時間はすでに8時を回っていた。



尋くん、起きてるかな…。


昨日のこと、どう思ってるんだろう。何もなかったみたいに普通にしてるのかな。それとも、気まずくなってたりするのかな。


考えれば考えるほど不安ばかりが膨らんで、またネガティブな方に引っ張られそうになる自分をなんとか押しとどめて、そっと布団から抜け出した。



部屋のドアを開けると、ひやりとした空気が頬に触れて、思わず肩をすくめる。冬の朝の廊下はやっぱり冷たい。


できるだけ音を立てないように気をつけながら、ゆっくりと一歩ずつ階段を下りていく。静まり返った家の中で、自分の足音だけがやけに大きく感じてしまって、なんだか妙に緊張する。


そういえば、リビングって…エアコン、つけたままだよね…?
尋くん、寒くなかったらいいけど…。


昨日の夜のことを思い出そうとしても、ところどころ記憶があやふやで、はっきりしない部分が多い。布団を出した覚えもないし。

それなのに——

ベッドのことだけは、やけに鮮明に覚えていて。