「…それ、反則」
ぽつりと零れた声は小さかったけど、ちゃんと聞こえてしまって、また心臓が跳ねる。
さっきまであんなに余裕そうだったのに、今は少しだけ苦しそうで、でもその理由が自分にあるって思うと、どうしようもなく胸が熱くなる。
「だから、そういうのがいけないんだってわかんない?」
「だって、私、尋くんがっ…」
――好きだから。
そこまで言おうとしたのに、その言葉は最後まで形にならなかった。
ふいに重なった唇に、全部、奪われてしまったから。
初めてのキスは、本当に一瞬で、でも私にはひどくゆっくりに感じられて、時間が伸びたみたいに、現実じゃないみたいに、ただその感触だけが鮮明に残る。
音もなく触れて、すぐに離れていった唇。



