【完】きみは硝子のゼラニウム





首元から離れたと思ったら、今度は鼻先が触れそうなくらいの距離に顔があって、視界いっぱいに尋くんが映る。



「俺はひなが思ってる王子様には残念ながらなれないし、好きな子を前にして我慢できるほどできた人間でもない」


「…っ、」


「怖い思いさせたいわけじゃないけど、さすがに不用心すぎて困る」


「…ご、めんなさっ…」



謝ろうとしたその瞬間、コツン、と額同士が触れ合って、思わずまた目をぎゅっと閉じる。

でも、その近さが嫌じゃなくて、むしろ安心してしまう自分がいて。


確かに、尋くんの言う通りだと思う。

好きだって言ってくれてる相手に、一緒に寝たいなんて、普通なら言わない。


無防備すぎるし、勘違いされても仕方ない。それでも――。



「…尋くんなら、怖くない…」



その瞬間、尋くんの体がぴたりと止まったかと思うと、次の瞬間には勢いよく距離を取られる。

私の上に跨ったまま、片手でぐしゃぐしゃと前髪をかきあげて、何かを堪えるみたいに視線を逸らしている。

その仕草がさっきまでとは全然違って、少しだけ余裕がなく見えて、胸がどきっとする。