【完】きみは硝子のゼラニウム





このままだと、きっと尋くんはリビングに戻ってしまう。この人のことだから、何も言わずにソファで寝るつもりなんだろう。


でも、この家は無駄に広くて、空いてる部屋なんていくらでもあるし、来客用の布団だってちゃんとある。私の部屋に敷いたっていい。

選択肢なんていくらでもあるのに、それでも。



「ひな?」



不思議そうに名前を呼ばれて、少しだけ現実に引き戻される。

でも、離したくないって気持ちのほうが強くて、私はそのまま手に力を込めた。



「…一緒に寝ないと許さない」



自分でも驚くくらいわがままな言い方だったと思う。

もっと可愛く言えたはずなのに、余裕なんてなくて、必死で繋ぎ止めるみたいな言葉になってしまった。それでも、止められなかった。



「尋くんと…今、離れたくない」



言った瞬間、自分で自分の言葉に耐えきれなくなって、かあっと顔が熱くなる。

こんなの、ほとんど告白みたいなものじゃんって思ってしまって、恥ずかしさで逃げ出したくなるのに、掴んだ手だけはどうしても離せない。

視線を合わせる勇気がなくて、目だけをそっと上に逸らす。