【完】きみは硝子のゼラニウム





私の部屋の前に着くと、「お邪魔しまーす」なんて場違いなくらい軽い調子で言いながら、器用にドアを開けて、そのまま真っ暗な部屋に入っていく。

その動作さえもなんだか余裕があって、余計にドキドキしてしまう。


次の瞬間、私はまるで壊れ物みたいにそっとベッドの上に降ろされていた。ふわっと柔らかい感触に包まれて、体は離れたはずなのに、心臓の音だけは全然落ち着いてくれない。


胸の前でぎゅっと両手を握りしめながら、私はただ尋くんを見つめることしかできなかった。


だって、かっこいいんだもん。

ずるいくらいに、かっこいい。


ベッドに転がる私の隣に腰かけて、くすっと笑う尋くん。その距離の近さにまた息が詰まりそうになる。



「おやすみ」



優しい声と一緒に、頭をさらっと撫でられて、そのまま布団をかけようと腕が伸びてくる。


そのまま見送るなんて、できるわけない。


気づいたときには、その腕をぎゅっと掴んでいた。