【完】きみは硝子のゼラニウム





手の中の小さな鏡を閉じては、また開いて、自分の顔を確認する。前髪は大丈夫かな、顔変じゃないかな、変に緊張した顔してないかな……。


そんなことを何度も何度も確認して、また鏡を閉じる。


けれど数秒後にはまた気になって、ぱちん、と鏡を開いてしまう。さっきからそれをずっと繰り返していて、自分でも「私、何やってるんだろう」って思うのにやめられない。



ふと、改札の方に目を向けたときだった。


人の流れの中に、ひときわ背の高い人影が目に入る。周りの人より少し頭ひとつ分くらい高くて、すらっとしたシルエット。見慣れたその姿を見つけた瞬間、胸がドクンと大きく跳ねた。


……尋くんだ!


そう気づいた瞬間、考えるより先に体が動いていた。気づいてほしくて、思いきり腕を振る。

ぶんぶん、と大きく手を振ると、改札を抜けた尋くんの視線がこっちに向いた。ぱちりと目が合ったその瞬間、尋くんが一瞬驚いたような顔をして、次の瞬間、吹き出すように笑った。



えっ。


笑ったまま、そのままこっちに駆け寄ってくる。長い足であっという間に距離を詰められて、私は思わず固まった。


な、なんで笑うの……!?



「……おはようございます」



さっきまであんなに手を振っていたくせに、声はちょっと拗ねたみたいに小さくなってしまった。