きみは硝子のゼラニウム





「ほら、行くよ」



彼は大きな手で、私の手を包み込むように握り、そっと引っ張る。


その手は、あたたかくて、ふわっと爽やかな香りがして、さっきの安心感と重なる。


地下へ続く階段を降りると、やっぱり彼の背中の周りには、星が降っているみたいにキラキラと光って見える。


 

階段を下りきると、隣に立つ私と同じ高さに電車の音が迫る。


ゴーッという音とともに電車が近づき、プシューと扉が開く。


手が離れ、やっと現実に戻った気がする。



「この電車?」


「は、はいっ」



慌てて答えた瞬間、思い出す。

この香りの正体。



「じゃあ、気を付けて」



その声とともに扉が閉まる。


残されたのは、まだキラキラと光る星と、太陽みたいに爽やかな、あの香り。



電車が発車して、彼が遠ざかっていく。




私は思わず、寄りかかって、目をつむる。

思い出す。

黄色の、春の、匂い。





ミモザ、だ。














” Mimosa ”

― 感謝 友情 優雅 密かな愛 思いやり