ぎゅっと両手を握りしめると、震えが止まらないのが自分でもわかる。
情けない。ひとりで、どうにかしなくちゃいけなかったのに。誰かに助けてもらうなんて、嫌だったのに。
すると彼は、ゆっくり私の前に屈んだ。
私と同じ目線の高さまで、すっと。
次の瞬間、握りしめていた私の両手を、もっと大きな両手で、そっと包み込む。
「いっぱい泣いていいよ」
私にとっては魔法みたいな言葉だった。
泣いていい、なんて。そんなふうに言ってもらえたこと、あったっけ。
強くならなきゃとか、しっかりしなきゃとか、迷惑かけちゃダメとか、そんな言葉ばっかりで。
ポロポロと涙が頬を伝って、ぽたり、ぽたりと地面に落ちていく。
濡れたアスファルトに小さな跡を作って、すぐに消えていく。
やがて呼吸が少しずつ落ち着いて、ぼやけていた視界がゆっくりクリアになっていく。
そして、はじめてちゃんと、彼の顔が見えた。
黒くて、柔らかそうな黒髪。
少し前髪がかかった、切れ長で奥二重だけれど決して小さくはない瞳。
すっと真ん中に通った綺麗な鼻筋。



