内心では「これなら方針はすんなり決まりそうだ」と安堵していたが、話を進めていくうちに「ん?」と思ってしまう発言が増えてきた。
それが「美咲は君のような男だったら幸せになれる」だの「自分の娘ながら良妻賢母の素質があると思わないか?」になった時点でチラッと原嶋さんと母親のほうを見た。
原嶋さんは──微かに首を横に振っていた。
母親のほうはそれに気づきもせずに父親の言葉に頷いていた。
これは……。
思っていたよりも拗れた事情が裏にあるぞ。
俺はハンカチで冷や汗を拭った。とにかく原嶋さんの意思を確認するのを第一目標に切り替えて、今はこの場を乗り切ることだけを考えた。
「あの人たちはね、理想の結婚を娘に求めているだけなのよ」
所長の声で我に返る。
「それが最悪の形で崩れた。だから一刻も早く理想に戻したくて、近くにいる貴方を狙った」
「……原嶋さんの意思が一番です、それは変わりません」
俺は宣誓するように背筋を伸ばした。



