シェヘラザードに捧げる物語




「明後日の昼に、依頼人と打ち合わせをすることになりました」

「あら、依頼人の“ご両親”ではなくて?」

「それはもう十分させていただきましたので」


 俺はさりげなさを装って、コーヒーにスティックシュガーとミルクを入れた。

 マドラーでかき回すと白い渦が出来てカフェラテのような色になる。


「依頼人の親族が強烈なパターンね」

「……これ以外にもパターンがあるんですか?」

「あるわよ。本人が一癖も二癖もあったり、普通かと思ったらじわじわおかしなとこが出てきたり……」


 所長はお気に入りらしいポーションタイプの紅茶を作った。ミントの爽やかな香りが広がる。

 俺はマグをゆっくり傾けて一口含んだ。まろやかな苦味を楽しんで、テーブルにそっと置く。


「ご本人はホテルを訴える気はないそうですので、君塚と浮気相手に集中できそうです」

「そうでもないわよ。できる限りあのご両親にも気を配っておきなさい」