シェヘラザードに捧げる物語




 ……誰と連絡してたんだろう。


 まさか、彼氏とか……?


「いやいやいや、まだ決まったわけじゃないし」


 俺は自分に言い聞かせるように呟いて、スティックタイプのインスタントコーヒーをマグに入れる。

 お湯を注いでマドラーでかき回しながら考えるのは、明後日の昼食で聞くことだ。


 大前提はある程度だが柴田から聞けた。

 君塚さんとその愛人への方針はどうするか……訴えるのか、示談を求めるのか。

 昼食の時間がどれほどになるかはわからないが、これだけは決めさせてもらわないと。


 ……照屋のことも気になるな。


 この分だと君塚さんがストーカーになる可能性は高い。その場合に備えて彼のお父さんと連携して……。



 ガチャリとドアノブが回る音がした。



 思考をいったん中断し、「お疲れ様です」と顔を向ける。


「お疲れ様」

「所長」


 俺は軽く頭を下げた。垣原所長は後ろ手にドアを閉めながら「進捗はどうかしら?」と目を細めた。