シェヘラザードに捧げる物語




「接近禁止にされかけた。今は俺に構ってる場合じゃないからって」

「……運がよかったな」


 俺は半分呆れつつこめかみを揉んだ。もうそれしか言えない。


「どうしよう、このままじゃ美咲は軟禁されたまま一生を──」

「滅多なことを言うんじゃない!」


 小声で、だが厳しく遮れば照屋はハッとした様子で自分の口をふさいだ。

 俺だって彼女のそんな未来を考えなかったわけではない。仕事も辞めさせられて、親の決めた相手と結婚する──いつの時代の人間だ。


「いいか、俺が何とか彼女と話せるよう頑張るから。お前は余計なことをしないでくれ」

「親父にも言われたよ……」


 照屋は肩を落としながらも頷いて、大人しくしていることを約束した。


「それじゃ昼休みも終わるし、俺は事務所に戻るよ」

「おう、任せてくれ」


 俺はそう言って照屋と別れ、柴田が待っている店に戻った。


「すまん、柴田。待たせた!」


 柴田は誰かと連絡でも取っていたのか、俺に気づくとスマホをバッグに戻した。