シェヘラザードに捧げる物語




 君塚さんの愛人にはまだ話を聞けていない。早急に話をさせてもらいたいが、この分だと時間がかかりそうだ。


「君塚さん、復縁以外には何か言ってなかったか? ホテルを訴えるとか」

『なかったと思う、録音したからそれを送るよ』

「よく録音できたな……」

『電話してきたからとっさに録音のボタン押したんだ』


 照屋は『対面じゃなくて本当によかった』と微かに笑い声を漏らした。


「わかった、パソコンのアドレスはわかるよな? それに送ってくれ」

『ああ、すぐに送るよ……ところで、美咲がどうかした?』

「直接話せそうなんだ」

『本当に……!?』


 照屋の嬉しそうな響きが電話越しでも伝わってくる。


「でもちょっと問題があって……」

『うん?』


 俺は原嶋さんのご両親に狙われていることをしゃべった。柴田のメールや明後日の昼食についても同じく。

 だがこれで原嶋さんから詳しい話を聞けて、彼女の意思を交渉に反映できそうだ。