シェヘラザードに捧げる物語




「まぁ、難しいな」

「そっか……」


 会話が終わってしまった。

 それに焦るでもなく、私は胸の奥に引っかかる何かを感じて、咀嚼しながら記憶の底をひっくり返していた。


 照屋さん……。


 てるやさん。


 どこかで聞いたか見たかしたはずなんだよな。


 ずっと昔じゃなくて……すっごい最近に。


 
「……原嶋さんからホテルに連絡はあったか?」


『柴田さん、こちら招待客のリストです』



 ──あ。



 ぽと……とキノコが皿に落ちる。


 行儀が悪い、と思う間もなく口からは間抜けな声が漏れた。


「柴田?」

「いとこ、だよね……? 照屋さん、原嶋さんの」

「あ、ああ……なんだ、知らなかったのか」


 大賀くんは一瞬きょとんとした顔をして、納得したように軽く頷いた。


「あいつが俺に連絡したんだよ。ヤバいことになったから助けてくれって」

「正式に依頼されたわけじゃなかったんだ」

「ああ……かなり混乱してて何言ってるかさっぱりだったんだけど、結園ホテルって聞こえたから所長に伝えたんだ」