『あーそこなら……この駅が近いな』
大賀くんはゴソゴソ何かしていたと思ったら駅の名前を教えてくれた。
「うん、お昼にその駅ね」
そのまま「着いたらメールするよ」と電話を切る。席に戻ってカップを両手で包むように持つと、じんわりと温かさが指先から伝わる。
このぶんなら、もう少ししたらいい具合に冷めるだろう。
何の気なしに窓の外へ目をやった。イチョウの木が植えられた歩道は鮮やかな黄色で、澄んだ青空とのコントラストがただ美しい。
行き交う人たちはそんな景色に目もくれず、コートの襟を立てて足早に過ぎ去る。子どもを連れた母親も、落ちたイチョウの葉を拾おうとするのを叱り手を強く引いていた。
腕時計に視線を滑らせる。まだそこまで時間は経っていない。お昼まではたっぷりあるけれど、知らない駅だし早めに着いたほうがいいだろう。
私はコーヒーを口に含んだ。まろやかな苦味を堪能すると、早々に店を出た。



