シェヘラザードに捧げる物語




 あれは、高校三年の冬だった。

 俺と柴田は日直で、放課後の誰もいない教室で学級日誌を書いていた。グラウンドでは運動部の掛け声が三階の教室まで響いていたことまで覚えている。

 俺が先に半分だけ記入して、もう半分を柴田に書いてもらっていた。こっそりと長いまつ毛に、それが落とす影まで観察していた。バレたら絶対に嫌われるから視線を時々窓ガラスへと向けて。

 この心臓の音が聞こえないようにと願いながら、同級生に「顔が怖い」と言われながらポーカーフェイスを装うのが高校生活の日課になってしまっていた。


 そうだ、俺はこの三年間、ずっと柴田が好きだった。


 穏やかで、優しくて、真面目なやつだった。

 クラスではあまり目立たないタイプだったけど、女っぽい顔立ちと所作から気にしてるやつが何人かいた。

 いつから好きになっていたか……は思い当たる節がいくつかある。