シェヘラザードに捧げる物語




 それに、と大賀くんが続ける。


「協力的な事件関係者は大事にしないと」


 その言葉に納得すると同時に、どこか安心している自分がいた。

 もしも「お前が心配なんだ」とかそれらしいことを言われたら、その意味をぐるぐる考えて休めなかっただろうから。

 あんな感情に振り回されるのは、もうごめんだ。


「……別に、そこまでしなくても協力するよ。川島さんや他の皆もそうだし」

「そうだな、スタッフの人たちは正直に話してくれた」

「だから、送るのは──」


 シンプルな着信音が鳴った。


「悪い、俺だ」


 大賀くんが背中を向ける。その隙に薬局へ急ぐのも違う気がして、私も何となくスマホを取り出してメールを確認したりしてみた。


「すまん、送れなくなった」

「だから、大丈夫だって」

「これでタクシー使ってくれ」


 大賀くんは財布から万札を二、三枚引っぱり出して私に押し付けてきた。