シェヘラザードに捧げる物語




 処方箋を受け取り会計を済ませた。さて、薬をもらわないと。

 遅くまでやってる薬局が斜向かいにある。そこでもらったら電車で帰ろう。


「今日は本当にありがとう」


 改めて彼に頭を下げたら、「仕事だからな」と笑った。そのカラッとした笑顔に何故だかひどく安心する。


「それじゃあ、お疲れ様」

「ああ、一区切りついたら連絡するよ」


 さも当然のように言われて、治まったはずの動悸が復活しそうになる。

 本人はそんな意味で言ったんじゃないだろうに、私は何を考えているんだろう。


「うん、聞きたいことがあったらいつでも連絡して」


 当たり障りのない、協力的な返しを残して病院をあとにしようとした。


「帰るんだろ、送ってく」

「えっ」

「タクシー捕まえとくから」


 そこまではさせられない。大賀くんだってこの件にかかりっきりなわけにはいかないだろうし。


「いや、大丈夫。普通に電車で帰れるから」

「やめとけ、タクシーで帰ったほうが絶対にいいって」