シェヘラザードに捧げる物語




 主任が電話を代わったときだろうか。

 私自身も気になったので、川島さんの隣りに座って話を聞くことにした。


「はい……あの、新郎の君塚(きみづか)さんがすごく怒ってスタッフルームにきて……」

「そのときに、何か凶器……ナイフや鈍器を持っていましたか?」

「……いいえ、持っていなかったと思います」


 川島さんは慎重に答えた。あの修羅場で全てを記憶しているとは思えないし、下手なことは言えないだろう。


「では……何に怒っていたのか言っていましたか?」

「ええ、その……どうしてあの女を入れたんだって、それしか聞いていません」

「あの女、というのは?」

「披露宴に乱入してきた女性です」


 私を殴った女性でもある。テーブルに置いていた花瓶で君塚さんに危害を加えようとしたのを庇ってこうなってしまった。


「それで、川島さんはそれに何か言いましたか?」

「いいえ、私は何も……」

「何かしら声をかけた方はいらっしゃいますか?」