シェヘラザードに捧げる物語




「柴田さん、どうでした?」


 川島さんが真っ先に心配してくれた。彼女は彼女で左腕をガーゼで押さえていて、そこが赤くにじんでいる。


「とりあえず様子見ましょうって」

「そうなんですか? 一応レントゲンとかCTスキャンとか撮ったほうが……」

「明日か明後日に総合病院行って撮ってくる」

「そのほうがいいですよ、絶対」


 お互い疲れた顔をして笑い合う。戦いを共に生き抜いた兵士のように、「生きててよかった」と健闘を讃えるような空気。

 この空気になったことは一度や二度じゃない。騒動が起こるたびにこうしてスタッフたちはお互いの無事を確かめて喜ぶようになっていた。


「……その、すみません、川島さんのお話をうかがいたいのですが……」


 その空気に割って入るのはかなり勇気がいるだろう。

 それでも大賀くんは仕事をしなければならない。


「はい、ええと……どこからだったか……」

「スタッフルームに新郎が怒鳴り込んできたところからお願いします」