シェヘラザードに捧げる物語




 しかし、そこで職場の女性がマイクを手に取って微笑んだ。


 ──私も彼女が好きでした、男だったら絶対に私が結婚してました!


 そして次から次へと職場の人たちにマイクが手渡されて。


 ──うちの幼い娘と、新郎の彼は結婚の約束をしてました。幸せにならないと絶対に許しません!

 ──私は二人の子と結婚したいです。

 ──俺は新郎のことが好きでした、結婚してもライブ行こうな!


 ざっと十数人くらいが短いスピーチを終えると、会場の空気は和やかな雰囲気に変わっていた。

 どうやら余興だと思われたらしい。

 私たちスタッフが行動するより早く、事態を平和に収束させてしまった。


 ──あれは完全にアドリブだったんです。


 後日、尻拭いをお客様にさせてしまった……ということで謝罪に向かうと裏側を教えてくれた。

 彼を披露宴に呼んだのは、同じ職場なのに仲間外れにするのはどうかと思ってのことだと言う。