シェヘラザードに捧げる物語




 大事な娘が、大切な恋人が職場で何度もトラブルに巻き込まれて時には怪我までして。

 それなのに今の職場にしがみついてるんだもんなぁ……。

 私なら弱みでも握られてるのかと疑いたくなる。


「好きなんだもん、結園」


 そりゃあトラブルはありえないほど起こるし、人間の怖い面を見てきたし、辛いこともたくさんある。

 それでも。



 それでも、それだけじゃなかった。



 幸せな披露宴を同じくらい見てきたし、関わってきた。


「職場の人たちのスピーチリレーはすごかったなぁ……」


 花嫁さんの職場で、彼女に横恋慕している人がいた。

 別にストーカーみたいな真似をしてるわけじゃなかったから、式や披露宴に呼んだんだけど……。


 その人がスピーチでやらかした。


 ──本当に大好きでした、一生忘れません!


 そう言うと、大号泣して会場から走り去ったものだから妙な空気に包まれてしまった。