シェヘラザードに捧げる物語




「一人にして、二人とももう帰って」


 お母さんはまだ私を説得しようと唇を震わせたけど、誠太郎くんが肩を押さえた。

 私の意思の強さを見て味方になってくれるのかもしれない。

 恋人だもの、協力してくれるはず。


「柴田さん、ここは彼女の言う通りにしましょう」

「でも……」

「彼女が納得するために時間が必要です」


 ……どうしても、お母さんの味方をする気ね。

 突きつけられた事実に、横を通り過ぎる二人の顔が見られなくてうつむいたまま立ちすくむ。


「送ったらすぐ戻るから」


 誠太郎くんの言葉が遠く聞こえる。

 おかしいな、さっきまでは聞こえるだけでドキドキして甘い気持ちになれたのに。

 今はもう……何も感じない。


「誠太郎くん……」


 ふらふらとソファーに座り込む。

 お母さんや彼からすれば、そんなにも受け入れられないことなんだろうか。

 ……受け入れられないだろうな。