シェヘラザードに捧げる物語




「お、誠太郎くんて好きな人には……その、すごく優しいんだね」


 甘い、とはっきり言うのはなんだか恥ずかしかった。

 こんな扱いを受けたことがなくて、戸惑っていたのもある。


「そりゃそうだ」


 大賀くんは朗らかに笑ってみせた。

 子犬のような無邪気さにのぼせそうになる。


「ずっと好きだった人とやっと付き合えたんだから」

「……ずっと好きでいてくれたの?」


 驚いて振り向くと、今度は鼻の頭に唇を落とされる。


「忘れられなかった。高校出てからもずっと」

「誰かと付き合ったりとかは……」

「ない。告白されても律の顔がちらついて、断ってた」


 ……私はそれなりに付き合ったりしてたよ……。

 どうしよう、これ正直に言ったほうがいいのかな。

 でもこの空気で言うのも違う気がするし……。


「朝食は俺が作っていい?」

「えっ、いいよいいよ、まだ寝てて」

「じゃあ洗い物代わるよ」