シェヘラザードに捧げる物語




 遅めに起きて、部屋着にしている無地のワンピースを着るとコーヒーを淹れた。

 ちょうどいいくらいに冷めるまで……と、今は食器を洗っている最中。

 ……だったんだけど。


「わっ!」


 後ろから伸びてきた手に抱きしめられた。


「びっくりした……」

「なんで勝手にベッドから出たんだ?」


 大賀くんがそう言いながら頬にキスを落としてきて、危うく手にしていたお皿を落とすところだった。


「お、大賀くんて情熱的なタイプだったんだね……」

「誠太郎」

「え?」

「これからは誠太郎って呼ぶし、俺も律って呼ぶ」


 そう約束しただろ、と吐息混じりに囁かれて、ああ確かにベッドの中で約束したなぁと思い出した。


 しかし、大賀……いや誠太郎くん……。


「甘すぎる……」

「うん? 淹れてくれたコーヒー、別に甘くなかったぞ」


 ああ、あのコーヒーちょうどいい具合に冷めたのか。

 ……じゃなくて!