シェヘラザードに捧げる物語




 そもそもどうして原嶋さんは家を飛び出したんだろう。

 両親の暴走に耐えかねて……とか?

 だとしたら、どうしてこのタイミングなんだろう。


「どうして原嶋さんはあんな無茶を……」


 川島さんも不思議だったらしい。

 ひとり言のように疑問を漏らした。


「いや、その……それが……」


 照屋さんは視線と指を忙しなく動かした。



「俺たちが盗聴してたことがバレて……」



 ──私たち四人の空気だけが固まった。


「は?」

「え?」

「……」


 私は頭を抱えたくなった。


「盗聴って……」

「その……あのレストランのときに、二人がどんな話してたか報告しろって」


 川島さんは訳がわからないという顔で、私たちを見回している。


「すいません、どういうことですか……?」

「私と照屋さん、原嶋さんのお母さんに言われたんです」

「俺は家への不法侵入を不問にするからって」

「私はホテルを訴えるの止めると」


 大賀くんが目元に手を当ててため息をついた。


「取引して全部聞いてたわけか」