シェヘラザードに捧げる物語




「君塚さんのお父さんがホテルにいらしたそうで、一緒に行くことになって」

「え? 入院してるって聞いたんだけど?」


 まさか抜け出して……と不安になっていると、柴田は「外出許可はもらってるから大丈夫」と教えてくれた。


「川島さんから連絡が来て、直接謝罪したいからホテルに今来てるって」

「それは……柴田が復帰してからでいいんじゃないか?」

「直接謝罪するまで帰りそうにないって言うから、ホテルに行くことになって……」


 柴田はそこで言葉を切って、ちらりと畑宮さんを見た。


「部屋を出たら、隣りから畑宮さんが偶然出てきたの」

「……家は違うよな?」

「二、三日前から友だちの家に泊まってて」


 なるほど、畑宮さんの友人が柴田の隣りに住んでいて、ホテルに行こうとしている柴田とばったり出会ったというわけか。


「それで、君塚さんのお父さんのことを話したら一緒に行くことになって」