シェヘラザードに捧げる物語




「柴田?」


 振り向くと、彼女が──彼女と見知った女性がそこにいた。


「お久しぶりです」


 バツの悪そうな表情で会釈をしてきたのは、あの日、ホテルの空き部屋で泣きじゃくっていた君塚の。


「畑宮さん……? どうして?」


 俺の疑問に、二人は顔を見合わせた。

 その顔には困惑が見え、「どっちがどう説明したものか」と戸惑う雰囲気が流れる。


「歩きながらで構わない?」

「ああ、駅まで行くんだけど……そっちは」

「私たちもです。ホテルに行かないと」

「俺もです」


 なんだ、目的地は同じなのか。すごい偶然だな。

 普通なら笑い話になりそうなものだが、ここ最近の状況ではそうも言っていられない。


「なにかあったんですか?」


 駅まで歩きながらあらためて二人に聞くと、柴田が「説明していいですか?」と畑宮さんに許可を取り、どうして一緒に行くことになったのかを語り始めた。