シェヘラザードに捧げる物語




「疑っちゃいますよね」


 姉妹の仲なんてわからないし、妹さんの新郎への気持ちは私の妄想だし、その後どうなったかなんて知る由もない。


 ただわかる事実は、新婦は浮気をしてその場で破談になったということ。


 それ以上のことは、憶測の域を出ない。


「やたら修羅場が起こるホテルですから、余計に」

「呪われてるのかってレベルで起きますからね……」


 二人そろってため息をつく。


「仮にですけど……」


 私の言葉に、川島さんが視線を上げた。


「仮に、あの二人が控え室で密会するように仕向けていたとしたら……」

「え」

「そしたらとんでもない策士ですね」


 グラスを口に運び、中身を半分ほど減らす。

 川島さんはなにも言わず、周囲の喧騒や食器の触れ合う音、歓声や乾杯の音頭だけが響く。


「……忘れましょうか、この話題」

「それが一番ですね」


 川島さんの提案を区切りにして、アルバイトの募集をまたかけるよう準備をしておくべきかに話題を移した。