シェヘラザードに捧げる物語




 川島さんが瓶に残ったビールを注いでくれたので、慌ててグラスを傾ける。

 まだ冷えているビールの、苦い香りが鼻をかすった。


「それから両家親族の控え室であの写真を見せて、大騒ぎになってるところに二人が遅れてきて……」

「それで食事会に変更になったと」


 頭の中でドロドロの愛憎劇が幕を開ける。

 妹さんは実は新郎のことが好きだった。だけど姉の婚約者を横取りなんてできない。

 でも大きなチャンスが出てきた。

 姉の元カレの存在だ。

 姉と元カレはずっと新郎の目を盗んで密会を続けていた。妹さんはそれを察知し、二人の関係を利用して、この結婚を破談させようと企んだ。

 そんなことに二人は気づいておらず、スリルを求めてあろうことか結婚する日に事に及んでしまう。

 妹さんはこの機会を逃さず、動かぬ証拠を写真に収め新郎と姉を別れさせることに成功した。


「……もちろん、私の見間違いの可能性もあります。でも……」