シェヘラザードに捧げる物語




 川島さんが髪を耳にかけた。白い小粒のピアスが鈍く光る。


「……そこは、ちょっとわからないんですが……妙に冷静だったのは事実です」

「……わりとグレー寄りですね」

「普通はもっと取り乱しますよね?」


 確かに、普通は固まってしまって、すぐ写真に撮って部屋を出る……なんてことができる人はそうそういない。

 普段から冷静沈着なタイプならできるかも……うーん、情報が少なすぎて判断できかねる。


「冷静なのもひっかかりますけど……笑顔はいつ見たんですか?」

「部屋を出た妹さんを追いかけて、いきなり見せるのはショックが大きいから止めようって言おうとしたんです」


 ゴクリ、と生つばを飲み込む。


「横顔を見たら」



 ──笑ってたんです。薄く。



「私に見られたと気づいてからは、真剣な顔のままでした」

「……川島さんに見られたときだけ、ピンポイントで笑ってたのもおかしな話ですしね」